会社設立のきっかけは、
支えてくれた人たちへの恩返し。

友人たちとのキャンプ

会社を立ち上げたのは、実は周りの人たちの支えがきっかけです。

母を亡くした後、病院の仲間たちはお盆や正月になると実家に帰るのですが、私は家に帰ることができず、病院で一人で過ごすことが多くありました。すると、同じ病棟に入院していた仲間のお父さんが「一緒にうちに来るか?」と言ってくれたのです。それ以来、お盆や正月、ゴールデンウィークなど、たびたびお世話になりました。病院に連れて帰ってくれたときには「うちの息子をよろしくお願いします」とまで言ってくれました。

20代後半になると、地域で講演を行ったり、東京まで出向いて障がい者問題関連のシンポジストをしたりするようになりました。その頃、施設実習で病院に来た大学生たちと仲良くなっていたのですが、その友人の一人から「溝口さんの姿を見て、私もがんばろうと思った」という内容のメールをもらったのです。そのときに、「身の回りのことなど何一つできない、こんな自分でも人の役に立つことができるんだ」と気づかせてもらいました。

またその後、小郡市の小学校で講演を行ったときのこと。その小学校には筋ジストロフィーの子どもが通っていて、クラス替えを機に不登校になっていました。そんな中での講演でしたが、講演後にその子から、当時開設していたホームページの掲示板に、「ぼくも溝口さんみたいに夢を持ってがんばります」という書き込みがあったのです。講演を聞いた後、毎日学校来るようになったという話も聞き、このときに「人の役に立つことができるんだ」ということを再認識しました。

友人との外出を楽しむ

そしてふと気づくと、自分の周りには、見守ってくれている人、一緒に活動してくれる仲間、力を貸してくれる友人、そんな人たちがたくさんいるのです。そのことをとても幸せだと感じました。「この人たちに恩返しがしたい。それは、自分があらゆることに挑戦し、がんばっている姿を見せることではないか。自分の気持ちにまっすぐ生きることが唯一の恩返しではないだろうか」。そんな思いから、2003年に障がい者支援費制度が始まったことをきっかけに、思い切って筑後市で一人暮らしを始めたのです。

一人暮らしをする中で、自分の今までの経験を活かせるのではないかと思い始めました。つまり「どんな重度障がいを持っていても、地域で暮らせる社会を作っていく」ということです。それで、一人暮らしを始めて8か月後、福岡市に住まいを移すと同時に会社を立ち上げ、訪問介護事業をスタートさせたのです。

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